「はっくしょーいっ」 「うわ、きたな!」 「はいはいティッシュー」 「うう…おおきにー謙也先輩ー…ぐず」 「あっはは!鼻真っ赤やん!はっくしゅ!あーうー」 「お前もティッシュ」 「認めやんで!健康に気ぃ使うてる俺が花粉げふんなんて!はっくしゅい!」 「きたな!」 ぐずぐずと謙也の目の前でティッシュをひたすら消費している白石兄妹。どうやら二人そろって花粉症デビューらしい。鼻のかみすぎで真っ赤になった鼻をさすりながら涙目でぶつぶつと呟いていた。よっぽど健康オタクとして花粉症は許されないらしい。 謙也は、はあ、とため息をついて、ついこの間大量にもらってきたポケットティッシュがもうすぐなくなることに気づいた。 「白石くん!このティッシュ使って!」 「え、ええん?」 「白石さん!このティッシュぜひ使ってください!」 「ほんま?嬉しいっ!はっくしゅん!」 「白石くん/さん のためならいくらでも!」 呆然と眺めている間に、尽きかけていたティッシュがまた山に変わる。そうだ、こいつらモテるんだった。いくら花粉症になったとして、ティッシュを大量に使おうが、マスクで美貌が隠れようが、鼻をかんだティッシュをゴミ箱に投げ入れるのをミスっていようが。お構いなしらしい。 「あ、謙也も使う?へっくしょ!」 「いや、いらんし。俺花粉症ちゃうし」 「ふん!何言うてん!この俺が花粉症やのにお前がちゃうわけないやろ!」 「どんな言い訳や!」 「謙也先輩だめですよー現実から目をそらしちゃーほら、ティッシュあげますから」 「いらんて!あーもーちゃんとマスクしいや」 花粉症のためかダルいらしい二人は同時に机に突っ伏す。っておい、ここ俺の席なんやけど。鼻水垂らすな、アホども。 「頭いたいー鼻いたいー喉いたいーなあなあ謙也ぁ」 「はいはい。おまえ後輩の前じゃシャキっとせえや?ほら、のど飴」 「苦いの嫌やで」 「ちゃんと鼻とおるやつやわ。ほら、妹も」 「梅味やないと嫌」 「お前けっこう渋いな!あるで、梅」 はい、と某有名なのど飴を渡すと三角の形をした飴を勢いよく口にほうりこんだ。すぐに舐め終わったかと思うと、どうにも花粉症の薬というのは喉が渇くらしい。二人して水を要求してくるので、仕方がなく持ってきたミネラルウォーターを手渡す。 「こら、白石(兄)!兄ちゃんなんやから妹に譲らんかい!」 「嫌や、俺も喉かわいてんねん。半分こでええやろ!?」 「えーくーちゃんと間接ちゅー?どうせなら謙也先輩とがいーくしゅっ」 「ちょお、考えてみ?歯みがきもスピードスターの謙也と、はっくしゅ、ぐず…なにごと完璧な俺。どっちがええ?」 「くーちゃんダミ声ーえー迷うー」 「お前ら!俺やってちゃんと歯みがきくらいするわ!どんな目で見とんねん!俺はちゃんと清潔やで!」 それでもぐずぐず、と鼻を鳴らす兄妹。ってなんで俺こんなに世話焼いてんのやろ…。 「「はっくしゅいっ!」」 「ティッシュティッシュ!もーはやく花粉の時期終われぇええ」 飛びかかる鼻水から謙也が開放されるまで後数ヶ月。
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